前回の記事で、退職理由が「自己都合退職」と「会社都合退職」のどちらと見なされるかで、失業保険のもらえる総額や、もらえるタイミングも異なってくるということをお伝えしました。
今回は、「自己都合退職」と「会社都合退職」の退職理由について解説します。
退職の予定がない方も、知っておいて損はありません。
いざというときのためにも、しっかり知識武装していきましょう!
まずは、離職票の「離職区分」を押さえよう
退職は自己都合退職と会社都合退職の大きく2つに分けられますが、実際は一人ひとり様々な理由があって退職します。

十人十色だな。
ハローワークでは、この十人十色の失業理由を、機械的に13種類の離職区分いずれかに当てはめ分類していきます。
そして、離職区分ごとに会社都合となるか自己都合退職となるかが決まります。
会社都合となる離職区分は、1A、1B、2A、2B、2C、3A、3B
自己都合となる離職区分は、2D、3C、3D、4D、5E です。
離職区分は、退職後に会社から送られてくる「離職票-2」に記載されています。
会社都合退職とは「特定受給資格者」になることです!
会社の都合により雇用契約の終了を余儀なくされた退職者は「特定受給資格者」と呼ばれ、失業保険の手厚い受給資格が得られます。
具体的には、
- 失業保険を速く受け取れる(2カ月間の給付制限が解除となる)
- 給付日数が増加する
- 雇用保険への加入期間は6カ月あればOK
といった受給特典がつきます。

失業中は一刻も早く入金されたいよ~。
それでは、「特定受給資格者」として認められるケースを具体的に見ていきましょう。
「特定受給資格者」の具体例・倒産
もっともポピュラーなのが

突然会社が倒産しちゃったよ~!!
ほかにも、

勤めていた事業者が閉鎖されちゃったよ!
とか、

会社の移転によって通勤時間が往復で4時間以上になっても~た!
など、労働者側には全くもって落ち度がないケースです。
倒産や事業所の閉鎖、長時間の通勤時間など物理的変化を伴う退職は、「特定受給資格者」としての認定が容易です。ハローワークですぐに認定されます。
「特定受給資格者」の具体例・解雇
会社側からの解雇なども「特定受給資格者」とみなされます。
主な具体例は、
- 更新前提の契約が更新されないケース
- 「希望退職制度」に応募して退職したケース
- 会社からの「退職勧奨」による退職
などです。
このような直接的な解雇のほかにも、会社側との交渉トラブルに起因する退職も「特定受給資格者」として認められる可能性が高いです。
例えば、

もう3ヶ月以上も、残業時間45時間オーバーが続いている!過労死するわ!
とか、

技術職で入社したのに販売職へ異動を命じられた!、理不尽な配置転換だ!
とか

給与・待遇、労働時間、業務内容などの労働条件が契約内容と異なるよ!
さらには、
- 会社が法令違反を犯した、
- 給与支払の遅延、滞納、未払いの発生、給与の減額、
といったことによる退職です。

ブラック企業での退職あるあるだな!
これらは共通して会社側の都合により退職に追い込まれたケースです。
しかし、会社側は、

何言ってんだ!
あくまでも自己都合退職だろうが!
と主張してくる可能性が高いです。

全面戦争か!難儀だな!
そのため、在職中から事前の証拠書類集めが重要です。
ハローワークで、労働契約書、雇入通知書、就業規則などの書類の提出が求められる可能性が高いからです。

在職中も常日頃から会社の就業規則には目を通しておこうね。
認定難易度高し!の「特定受給資格者」具体例
セクハラ、パワハラ、いじめ、いやがらせの被害を受けて自己退職した場合でも、ハローワークに証拠書類の提出ができれば、会社都合の「特定受給資格者」として認定される可能性があります。
ただし、証拠書類として、元同僚の証言などの提出が必要です。

いや、在職者が告発なんかするかよ!
絶対、協力してくれねーよ!
証拠書類の提出なく口頭での説明だけで訴えても、ハローワークから特定受給資格者として認定される可能性は低いです。
在職中にパワハラ等を受けながら証拠集めを行うというタフさが要求されます。
自己都合退職にも複数パターンがある
一口に自己都合退職と言っても、退職理由は個人ごとに千差万別です。
自らの意思で辞めるパターン
自己都合退職で最も多いのが、自らの意思で辞めるパターンです。
例えば、

転職するので、辞めま~す!
または、

結婚するので、辞めさせていただきま~す!
はたまた、

資格取得に向け勉強に集中したいので、辞めます!
などなど、辞める理由は様々ですが、共通しているのは、自分の都合で辞めるということです。
懲戒解雇で辞めるパターン
また、労働者が重大な過ちを犯して会社になにかしらの損害を与えたために解雇となるパターンも、自己都合退職となります。
以前勤めていた会社での実話です。

君、経歴詐称しているでしょ?
「超有名大学卒業後、某大手新聞社にてIR担当」という肩書、あれ嘘だね?

(ゲ!なんでバレたんだ?)
ガタガタガタガタガタガタガタガタ

(はい、その動揺の仕方、明らかにクロね。)
君、懲戒解雇処分な。
経歴詐称での懲戒解雇は自己都合退職になるんですね。
また、セクハラを行って解雇されたケースも、

(ピー)だな!
(ピー)すぞ!
裁判の判決で、性的暴言を繰り返していた社員が懲戒解雇となっています。
こちらのケースも自己都合退職に当てはまります。
自己都合退職のワンチャン制度「特定理由離職者」
実は、自己都合退職者であっても、失業保険の受給で会社都合退職のように有利に受給できる可能性があります。
それは「特定理由離職者」としてハローワークに認定されることです。
「特定理由離職者」として認められるケースは、かなり広いです。
画像:厚生労働省ハローワークより
どれかに当てはまるのであれば、ハローワークに交渉してみましょう。
その際、離職理由を確認できる資料の提出を求められますので持参しましょう。
「特定理由離職者」として認められれば、失業保険の給付制限がなくなります。

書類を片手に、ハローワークでダメもとで交渉にあたってみるか!
まとめ
以上、今回は失業保険を受給するにあたり、自己都合退職と会社都合退職の具体例について解説しました。
退職の予定がない方も、在職中からしっかり知識武装しておくことでいざというときに役に立つと思います。
この記事がキャリア構築を行う上でお役に立てれば幸いでございます。