電子行政サービス「e-Gov」の電子申請は、手間と時間の削減を目指しています。

確かに電子申請だと、デスク上で短時間で申請が完了しそうでいいね。
電子申請のパンフレットに記載されている「早い」というワードにも惹かれます。そこでe-Govで電子申請をやってみることにしました。この記事は、実際に使ってみた体験談です。
結論・使いにくいよ!難解すぎる届書作成プログラム
電子申請するには、届出書類を電子データで作成する必要があります。
電子データを作成するためのツールが「届書作成プログラム」です。
引用:厚生労働省「電子申請のご利用案内」
「届書作成プログラム」アプリをPCにダウンロードして、従業員の申請情報を入力していきます。
入力画面がこちら
登録画面に従業員一人一人の情報を入力していくことで電子データが作成できます。

1人ずつ入力するの面倒だな。けっこう労力いるぞ。
調べたところ、届書作成プログラムには、まとめて登録ができるデータ取込機能があるようです。

使わない手はないではないか!
ってことで、早速ファイル取り込みに挑戦することにしました。
ファイル取り込みのマニュアルはどこにある?
まずは取り込みファイルの作成方法をググってヒットした厚生労働省のQ&Aをチェック。

なるほど!「データ取り込みにおいて、取り込める項目を教えてください。CSVファイル作成上の注意事項はありますか。」ってやつが該当しそうだ。
クリックすると、回答ページに飛びます。


なになに?
どうやら、このページには求めている情報はなく、「操作説明書(詳細版)」とやらに掲載されているようです。

そこで今度は「操作説明書(詳細版)」を探します。
あった!


うわ~、読む気になれない表紙だ~
気を取り直して、該当の「第4章2.(2)CSVファイルに保存された被保険者情報を取り込む場合」に飛びます。

該当箇所あった~!でもでもでも、読むのが辛い…


え~っと、・・・チッ!読むのめんどくせ~~~~な
苦行に耐えつつ読むことで、重要な情報が記載されていることに気がつきます。


おお!サンプルファイルがあるのか!
「届書作成プログラム」をダウンロードした同じ格納場所に、確かにサンプルファイルがありました!

中身はこんな感じです。


なるほど!情報を1行ずつ項目ごとに入力するのか!

弥生給与ソフトから必要な情報を取り出してコピペすればOKだな!余裕余裕~。サンプル様様~。ルンルン。
サンプルファイルの存在により、作業の手間は大幅に削減できる!と、高をくくっていたのですが、

この妄想は打ち砕かれることになります。
守るべき入力ルールは多い
マニュアルを読み込むと、どうやらプログラムに情報を理解させるには、情報をプログラムが理解できる形に変換しないといけないようです。
例えば、
- 男性は1、女性は2に数値変換が必要
- 生年月日を数字6桁表示にする 例:昭和62年5月1日 →620501
- 昭和は5、平成は7に数字変換する 例:昭和●年 →5
- 姓名の間には全角スペース 例:電子太郎 → 電子 太郎
- 姓名フリガナは半角 例:デンシタロウ →デンシタロウ
- 姓名フリガナの間には半角スペース 例:デンシタロウ →デンシ タロウ
などなど。
そのため、人事労務ソフトから抽出したデータはそのままでは使用できません。
入力ルール通りにデータを修正する作業が必要です。

結構、細かいルールがいっぱいあるじゃね~か!マニュアルをちゃんと読み込まねーと作業が進まねーぞ!
マニュアルを注意深く読み込み、ルール通りにデータを作成して、やっと取り込み開始画面へと進みます。
エラー原因をとにかく調べる

ふぃ~。なんとかファイルが完成した!やっとデータ取り込み画面に進めるぞ~!
取り込み画面をポチ!

しかし、開始早々エラーが発生!!

エラーの原因をひたすら探します。
あった!あった!あった!マニュアル全246ページの205ページ目に!!!

エラー原因は、数字一桁の場合は文字列に変換して二桁にする必要があった!ということでした。

そんなん、わかるかい!
なんとかエラーを突き止め、再チャレンジ。
しかしその後もエラーが頻発。
原因は、山﨑さんの「﨑」という環境依存文字が読み込めなかったり、中国人従業員名の簡体字が読み込めないといったものでした。
電子申請に挑み、届書作成プログラムにデータを取り込むところまでで、すでに5時間が経過しています。

ひ~、残業(無給)確定~
業務効率を阻害する本当の敵は〇〇かもしれない
どう考えても電子申請作業は時間がかかりすぎている…ここは紙の書類提出に切り替えた方がいいのではないだろうか…
柔軟な考えが頭をよぎります。引き返すなら今だ!
しかし!!!

ここで引き下がるわけにはいかねぇ!
と謎のプライドが発生。
むしろここまで時間と労力をかけたからこそ、どうしても引き下がれねぇ!!

俺は俺の責務(電子申請)を全うするのみ!
なんとしても電子申請を成功させる!めらめらと闘志がわいてきました。
そして開始から7時間、ついに作業は完了しました。気づけば時計は夜の8時。社内には誰もいない。
一人なんだかわけのわからない何者かと戦い、ついに電子申請手続きの戦いに完全勝利を治めました!!

よくやった!敵の名を教えてやろう!

教えてください!れんごく氏!なんなんですか!?

その名はサンクコストだ!ガハハハハ~
サンクコストとは
それまでに費やした労力やお金、時間などを惜しんで、それが今後の意思決定に影響を与えること。
結論
e-Govの電子申請を行う際に最も必要なスキルは、ITリテラシーではありませんでした。
最も必要なスキルとは、ずばり、約250ページのマニュアルから重要なポイントを抽出する「読解力」でしょう。
そして最大の敵は、時間と労力がかかることで引き下がれなくなるサンクコスト。
この敵と共存することで、

なんとか電子申請を成功させることができましたとさ~。
ちなみに、弥生給与というソフトを使えば、紙の申請書と同じフォーマットで、必要な従業員情報が登録された状態でプリントアウトが可能です。

弥生給与から申請書をプリントアウトして、不足する情報を手書きでパパっと追記すれば、きっと1時間もかからず作業は完了していたでしょう。

電子にこだわらず、紙で柔軟に対応しとけば残業(無給)しなくてすんだよな~
おしまい。