今回の記事では、弥生会計の資金繰り機能を実際に使って感じた
- 弥生会計の資金繰り表のメリットとデメリット
- Excel管理との使い勝手の比較
をお伝えします。

資金繰り担当者様の参考になれば幸いです。
弥生会計・資金繰り機能の内容は?
弥生会計の資金繰り機能で主要なものは3つです。
見積資金繰り表
まずは見積資金繰り表。
経営計画に基づいた、未来の資金状況を予測する表です。集計期間は決算期の1年で、月次単位で表示されます。
見積資金繰り表は、銀行から借り入れを行う際に提出を求められることが多いです。
そのため、常に最新の情報にアップデートしておくと、銀行に素早く提出できます。

未来の予測値は経営判断を行うための重要な資料でもあります!
実績資金繰り表
実績資金繰り表は、実際に行われた資金繰りの実績値です。
こちらも見積資金繰り表と同じく、集計期間は決算期の1年で月次単位で表示されます。
実績資金繰り表は、見積資金繰り表を作成する際の参考値として利用するケースが多いです。
資金繰りシミュレーター
資金繰りシミュレーターでは、当日から2か月後までの資金残高の推移グラフ、入出金、回収、支払の予定を参照できます。
資金に余裕がない会社では、月ごとではなく日ごとに細かく資金残高の推移を見ないと、月中の資金ショートを防ぐことができません。

資金繰りシミュレーターなら日ごとに確認できるので、月半ばの資金ショートも見逃しません!
資金がマイナスになるかどうかを、ボタン一つで即座に確認できるのはありがたいです。融資は即実行されるわけではなく、最低でも1カ月前には申し込んでおく必要がありますので。
資金繰りシミュレーターは、自転車操業で資金カツカツの中小企業にとって、なくてはならない機能でしょう。

この機能を一番使ってみたかったんです!
弥生会計・資金繰り機能のメリット
実際に弥生会計の資金繰り機能を使ってみた結果、3つのメリットを実感しています。
メリット①仕訳連動で登録作業を大幅に削減できる
別途Excelで資金繰り管理する場合は、会計ソフトとExcelとで登録作業が重複してしまいます。会計ソフトで一元管理することで、登録作業を大幅に削減できます。
また、弥生会計の実績資金繰り表は、入力済の仕訳データが自動集計されるので、別途入力することなくできあがります。
見積資金繰り表の作成にあたっては、拡張機能である
- 回収/支払予定管理
- 手形管理
- 預貯金管理
- 借入金管理
を使って、それぞれ新規取引発生時に条件を登録しておけば、見積資金繰り表にそれらのデータが自動連携されます。
画像:資金繰り拡張機能間のデータの流れ
自動連携で入力の手間をかなり削減できます。
メリット②作業の属人化を防ぐことができる
Excelは自由度が高いが故に複雑で属人化したシートになりやすいです。
Excelの操作レベルも人によって差があります。
そのため、
- 経営判断する側が理解できない
- 引継者が内容を理解するのに苦労する
という事が発生しやすいです。
以前私は前任者の突然の退職で、急遽前任者のExcel資金繰り表を引き継いだ経験があります。
充分な引継ぎ期間がなかったため、どこがどう紐づいて計算されているかがよくわからず、売掛金の入金額を誤入力してしまいました。
誤りに気が付き修正した時には、1か月後に資金残高がマイナスになるという衝撃事実が判明。
その時はたまたまイレギュラーな大型の入金があることがわかり(これも登録漏れ)、事なきを得ましたが、かなりの恐怖を味わいました。
資金繰り管理をシステムで行えば、売上仕入という商取引の主流部分の入出金サイトや、借入金の返済額をあらかじめ設定できるので、経営者や後任者もおおまかな資金予測が可能となります。

属人化で業務がブラックボックス化するのは会社にとってかなりのリスクとなるので避けたいところです!
メリット③予定値を実績値に修正する作業が不要
資金繰りを会計ソフトで一元化できると、データのメンテナンスが楽になります。
Excelでの資金繰り管理は、データを予定値から実績値に修正する作業が発生していました。
弥生会計の資金繰り機能を使えば、仕訳データから実績を自動集計してくれるので、実績値に変更する手間は不要です。

業務はどんどんシンプルにしていきたいものです。
弥生会計・資金繰り機能のデメリット
弥生会計・資金繰り機能には、かなり痛いデメリットもあると感じました。
デメリット①Excelからのデータ移行がスムーズにできない
見積資金り表と資金繰りシミュレーターを使いこなすために、事前に拡張機能の「回収/支払予定管理」に期日を登録しておきたいのですが、膨大な既存顧客リストから1社ごとに設定していくのはかなり大変な作業でした。
該当取引先の行を選択→開いた入力画面に条件を設定→登録。これを1社づつ、ひたすら繰り返します…
検索機能や並べ替え機能がなく、該当の取引先を目視で探さないといけないため、めちゃくちゃ時間がかかりました。
しかも登録ボタンを押すたびに、画面がスクロールして一番上の行に戻ってしまう仕様なので「今登録した取引先はどこだっけ?」と再度目視で探すことになり余計時間がかかりました。
とある日のツイート。。。
入力途中、「めんどくさいから今までどおりExcel管理でいいや!」と何度諦めかけたことか!

「ブログネタになる!」という一心で作業しました。

結局それかい!
ソフト導入時から資金繰り機能を使っている会社はいいのですが、大半の会社はExcelなど別ツールで資金繰り管理していると思われ…
なので、大量のデータをCSVで一括インポートできる機能があればいいなと思いました!
Excelに限らず、別ツールからの乗り換え検討にあたり、データ移行がスムーズに行えるかどうかは重要なポイントです。
残念ながら弥生会計の資金繰り機能には、データの一括インポート機能がなく、移行するには手入力でちまちま登録を行う必要があります。これがかなり辛かったです。
・ひたすら我慢強く登録するのみ!最初の設定の山を越えれば、後で楽になると信じて乗り切る。
・弥生カスタマーセンターに要望メールを送る→今後の開発に期待!

弥生さん!ぜひとも一括取込のインポート機能をつけてください!!ついでに検索しやすいように並べ替えと条件抽出機能が欲しいです!
デメリット②資金繰り項目ごとの内訳を調べるのが大変!
実績資金繰り表は、勘定科目ごとに「資金繰り項目」を設定しておくことで、自動集計されます。
なので、実績資金繰り表の数字に違和感を感じたときは、資金繰り項目設定の誤りが疑われます。この場合、各項目ごとの内訳明細を確認したいところです。
しかし、内訳明細を表示する機能がないため、原因の特定が難しく、正しく項目設定するのに時間がかかりました。
試算表から元帳に飛べるように、「実績資金繰り表」の画面から該当の数字をクリックして内訳画面に飛べる機能が備わっていると、項目の設定に誤りがないか確認できて便利だと思いました。
例:実績資金繰り表の画面からターゲットの数字をクリックすると、明細画面に飛ぶ
これがあると、修正作業がスムーズです!
対応策
・弥生カスタマーセンターに要望メールを送る→今後の開発に期待!

弥生さん!ぜひともお願いしやす!

お前けっこう図々しいな。
デメリット③登録済みの仕訳の修正作業が必要
入力済の仕訳データは実績資金繰り表に自動集計されますが、複合仕訳で「諸口」を使うと、正しい資金繰り項目に反映されなくなります。
複合仕訳とは、以下のような仕訳です。一行づつでみたときにそれぞれ貸借は一致しませんが、合計値でみると貸借が一致しています。
それぞれの科目を総勘定元帳で確認すると、相手科目が「諸口」となっています。
「諸口」科目の金額は資金繰り表の正しい項目に反映されず、「その他経常収入」「その他経常支出」の項目に集計されてしまいます。
正しい資金繰り項目に表示させるには、複合仕訳を単一仕訳に修正する必要があります。
登録済みの複合仕訳を単一仕訳に修正する作業もけっこう厳しいものがありました。

仕訳の登録のやり方も統一しておく必要があるのか!やっぱり運用前の設計って大事だな~。
対応策
仕訳登録は「単一仕訳」に統一する。

そもそも、複合仕訳はコンピュータ会計には不向きなんだよ。これはシステム側のデメリットっていうよりは、ユーザー側で単一仕訳を徹底しろって話だな。
補足・弥生会計の資金繰り機能はプロフェッショナル限定です!
弥生会計の資金繰り機能を使うには、プロフェッショナル以上のソフトを導入している必要があります。
画像引用:https://www.yayoi-kk.co.jp/products/function_list/index.html
プロフェッショナルのお値段はというと…
画像引用:https://www.yayoi-kk.co.jp/products/price/index.html
「スタンダート」ソフトと比較するとおよそ倍ほどの料金設定となります。
その分プロフェッショナルの限定機能は充実しています。
資金繰り機能以外にも
- 部門管理機能
- 予算管理機能
- 経営分析機能
- キャッシュフロー計算書機能
などが備わっています。

スタンダードは入力と集計と決算書作成までの一般的な機能のみです。

プロフェッショナルはプラスアルファで管理会計、分析、資金繰りまでできるのか!

入力集計作業はAIによってどんどん自動化されているぞ。これからの経理は分析機能や資金繰り機能といったプラスアルファの機能を積極的に使いこなせねーとやべ~ぞ!

ま、まあな・・・(人の事よりおめ~も頑張れや)
まとめ
以上、「弥生会計・資金繰り機能で脱Excelできるのか検証してみた!」をお送りしました。
やっぱり、Excelから移行するにはデータの一括インポート機能が欲しかった...
参考までに私の会社の場合、既存取引先が約500件、1カ月の取引仕訳数が約800件ほどの規模です。
この規模で手作業による登録作業に3営業日かかり、今60%ほどの登録が完了しています。
取引件数の大きな会社になればなるほど、さらなる労力がかかることが予想されるので、移行は現実的ではないですね。既存ツールでの資金繰り運用のままがよいと思われます。
ただ、最初の初期設定の山を越えると、その後は楽になると思います。

あとは都度都度メンテだけで負担は軽いはず!
とはいえ、まだ使い始めたばかりです。今後の使い勝手次第ではExcelでの資金繰り管理に戻すかもしれません。
業務効率化の旅はまだまだ続きます。
番外・会計freeeの資金繰り機能が気になる!
昨年2020年、新型コロナ特別融資がバンバン登場した頃に、会計freeeがいち早く資金繰り機能を強化していました。
会計freeeの資金繰り機能が気になっています。
う~ん。freee試してみたいな。顧問税理士さんに聞いてみようかな。

freeeは開発早いので、弥生さんも資金繰り機能の開発がんばってください!応援してます!

まあ開発は金かかるから資金繰り機能使うユーザーが少ないと、別んところに開発予算振るだろうな。

(安定のシビアさだな)
おしまい!