「補助金」
それは経営者にとって、とても魅力的なワードです。
ちまたには補助金申請を代行しマージンをいただく補助金コンサルなるビジネスが存在します。
補助金という名の血税を巡り、水面下では壮絶な補助金争奪バトルが繰り広げられています。そして時にはトラブルも発生します。
今回は、補助金コンサルと係争中の経営者Aさんの実体験をもとに、補助金コンサルを利用する際に注意すべきポイントをご紹介します。

補助金コンサルをご検討中の経営者様の参考になれば幸いです。
補助金コンサルとは?
補助金コンサルとは、補助金の申請を代行するサービスです。
新型コロナにより補助金制度が新設されており、補助金コンサルビジネスはまさに今が刈り入れ時です。
補助金ビジネスに参入するのは主に、
- 税理士
- 行政書士
- 中小企業診断士
といった、士業が多いです。
仕事自体はとくに免許を必要とすることなく誰でも申請代行の看板を掲げることが可能です。
そのため、補助金コンサルの中には悪質な業者もいます。
基本的に補助金コンサルとの関わりは1度きりのケースになることが大半のため、コンサル側も顧客とは息の長い付き合いを考えていません。
1度の取引でいかにたくさんの金額をもぎとるかに力を入れています。
補助金コンサル選定時のチェックポイント
実際に補助金コンサルとの交渉で目下痛い目にあっている経営者Aさんの体験をもとに、補助金コンサルを利用する際に注意すべき7つのチェックポイントを解説します。
① 甘い言葉で勧誘メールを送ってくる業者はNG
悪質な補助金コンサルは、どこからか調達した顧客リストを使い、セミナー案内メールを無差別かつ大量に流しています。
経営者Aさんのケースでは、会社の問い合わせ用メールアドレスに補助金セミナーの案内が送られてきました。
当時、新型コロナ感染拡大の影響で主体サービスの売上が落ち込み、Aさんは相当焦っていました。
正常時であれば、スパムメールだと判断し完全にスルーしていたと思われますが、「最大1億!コロナ対策補助金セミナー」というメールタイトルがAさんの目にとまります。
売り上げ低迷により先の見通しが見えなかったAさんにとって「最大1億!」という言葉はとても魅力的に映ったようです。
Aさんは、セミナーに即座に申し込み、参加特典と銘打った1対1の「個別相談」にも参加するのでした。
② セミナーを開催して集客している業者はNG
セミナーで集客をかけてくる業者も危険です。
お気軽に参加できそうな無料セミナーであっても、コンサルは本気で参加者を落としにかかってきます。
意気揚々と自信たっぷりに補助金採択率の高さを説明し、セミナー開催後の個別相談会では甘い蜜のような言葉を使って参加者を口説いてきます。
焦りと不安で眠れぬ毎日を送る経営者は、補助金を喉から手が出るくらい欲しています。セミナー主催者は、そんな経営者の急所を巧みな言葉攻めで突いてきます。
Aさんの場合、その場で申込書を記入し手付金30万を支払ってしまいました。
「申請期限まで時間がない。とにかく早く払ってほしい」と、かなり早急な対応を求められたからです。
③「契約書」の前に「申込書」を記入させる業者はNG
通常の商取引であれば、契約書と明記された書類を交わすのですが、悪質な補助金コンサルの場合、「申込書」という形で気軽な同意を求めてきます。
Aさんはセミナーでの個別相談会で「申込書」を記入。「申込書」なので、気軽な気持ちでサインをしてしまいましたが、実のところ申込書兼同意書であり、これを取り交わすことによって契約は履行される、という事が小さく記載されていたそうです。

いや~、Aさんもめちゃくちゃ詰めが甘くね?

Aさんは、経営者歴10年でたくさんの会社と取引されているので、よっぽど切羽詰まった状態だったか、補助金コンサルの手口が巧妙すぎたのだとおもわれます。
コンサル側は、
「個別相談時にも口頭で説明した。申込書兼同意書にサインがあり、キャンセルは認めない」
と主張してきます。
④「誰が担当するのか?」を事前確認する
悪質な補助金コンサルは集客だけに力を入れており、肝心の補助金申請書の作成作業は外注に投げています。
実際、Aさんの場合、コンサルはセミナー集客がメインで、申請書の作成自体はクラウドソーシングを使って安価に丸投げしていました。
そのため、申込直後から、コンサルとは全く連絡が取れなくなります。
Aさんはコンサルとの直接の交渉を希望しましたが、コンサルの名刺に記載されている連絡先に電話しても繋がらず、メールしても返信がなく、結局一度も連絡をとることはできませんでした。
そしてやはりセミナーに参加することはなんとしても避けましょう。
⑤ 支払サイトが極端に短いコンサルはNG
補助金は採択がおりたからといってすぐに受け取れるわけではありません。決められた期間事業を回し、事業実態の審査を受けた後、交付可能と決定が下りて始めて受け取ることができます。
悪質な補助金コンサルの場合、取引中はなかなか連絡が取れないにもかかわらず、補助金が採択されるや否や、請求書だけはものすごい勢いで送ってきます。
経営者Aさんは、補助金が実際に振り込まれてから支払うという認識でいましたが、コンサル側は採択が下りれば即支払うよう主張してきます。支払期日に関して、申込書に小さ~くひっそりと記載してあったのです。

もらった書類にはしっかりと隅から隅まで目を通さね~とな。
⑥ コンサル料の計算方法を確認する
補助金の受取額は、申請金額とは異なります。
補助金申請に関係する事業において、まずはかかった経費の妥当性を審査されます。すべての出費が経費として認められるとは限らないため、受取額は申請額よりも確実に少なくなります。
経営者Aさんの認識するコンサル料は補助金受取見積額の13%、対するコンサルの主張する請求額は申請金額の13%でした。認識相違による差額は7桁に及びました。
⑦ コンサルの会社名は必ずググって確認する
コンサルの会社は事前にかならずググって調べましょう。悪質な業者であれば、何らかの悪評が確認できます。
画像:批判的書き込みのサンプル
Aさんの場合、コンサル会社の社名でググってみたら「詐欺」というワードが見つかり、会社の住所はバーチャルオフィス、批判的な書き込みがたくさんでてきました。
まとめ
以上、「補助金は諸刃の剣・業者選定のチェックポイントを解説します」をお送りしました。
新型コロナの影響により、経営に大打撃を食らい、補助金コンサルの利用を検討している会社は多いのではないでしょうか。
状況打破の兆しがなかなか見えないと、焦りからどんどん余裕をなくし正常な判断ができなくなってしまいます。そして、正常な判断ができないときほど誰にも相談せずに物事を判断してしまいがちです。
現在、悪質補助金コンサルと係争中の経営者Aさんも、まさに誰にも相談しませんでした。
本来事業継続のために使われる血税である補助金は、経営者から正常な判断を奪う危険な代物であり、補助金を狙う有象無象の悪質コンサルを湧き起こす麻薬のような存在にもなりうるのです。

相談できない…それが経営者のサガってやつかもな~。補助金コンサルはそんな経営者のサガを熟知してるってことだな。