こんにちは!ゆるむです。普段は中小企業で、財務担当者として働いています。
財務担当者は、会社の重要局面に立ち会うことがあるかと思います。

新規事業の立ち上げで、新しい不動産の購入を検討することになった

会社が事業を回し続けていれば、否が応でも訪れるこれらの局面。財務担当者は銀行に融資の交渉を行うことになります。
日本の会社の9割を占める中小企業は、潤沢な資金がありません。そのため、事業継続には銀行からの借入はマストです。「積算価格」を知っていれば、銀行がスムーズに融資を実行してくれるかどうか、判断の一つとすることができます。
この記事では、銀行の融資担当者が重視する「積算価格」の求め方をお伝えします。
財務担当者の方は、ぜひチェックして見てください!
積算価格とは
銀行は「この会社には融資できそうか?」を調べるにあたり、まずは過去の決算書を求めてきます。そして、本業の事業がキチンと儲かっているかを確認しています。
が、実は最も重視している部分は「自社ビルなどの不動産を所有しているか?」です。不動産があれば、その不動産を売却すればまとまった現金に換金できるため、積極的に担保をとっておきたいわけです。
そして、銀行は物件の評価を「積算価格」を使って判断します。ですので、所有不動産の積算価格を知っておくことで、融資額の判断材料の一つとすることができます。
積算価格とは
土地と建物を別々に現在の価値で評価し、それを合わせた評価額のこと
積算価格 = 土地の現在評価額 + 建物の現在評価額
それでは、積算価格を使って土地と建物の評価額を求める方法を順を追って見ていきましょう。
土地編
まずは土地の現在評価額を算出するために、必要な情報を集めましょう。
土地面積を調べる
土地面積は、登記簿謄本(登記事項証明書)に記載されています。
画像引用元:法務省
登記簿謄本は法務局で取り寄せることができます。取り寄せる際は、住所(住居表示)ではなく、地番を用意しましょう。

地番は法務局で教えてくれます。 参考 管轄の法務局
土地と建物それぞれの登記簿謄本を用意しておきましょう。
路線価を調べる
土地の価格は定価がありません。そこで、指標として国や自治体が公表している公的な価格を使い、平米単価をもとめます。公的な価格には4種類あります。
・国土交通省の「公示価格」
・都道府県の「基準地価」
・国税庁の「相続税評価額路線価」 ←※公示価格の8割が基本となっている。
・市町村の「固定資産税路線価」 ←※公示価格の7割が基本となっている
参考:全国地価マップ
そのうち、積算価格を求めるには、基本的には「相続税評価額路線価」を使います。
相続税評価額路線価は、国税庁HP「路線価図・評価倍率表」から調べることができます。
実際に計算してみましょう。
路線価は「290C」です。これは、1㎡あたり290千円ということです。
※数字の後ろのCのアルファベットは借地の場合の割合になりますのでここでは説明を割愛します。
この場合、290,000円×300㎡で、87,000,000円が土地の積算価格という事になります。
そして、この積算価格にさらに土地ごとの細かい調整を入れます。
用途地域を調べる
用途地域(ようとちいき)とは、都市計画法の地域地区のひとつで、住居、商業、工業など市街地の大枠としての土地利用を定めるもので、13種類がある。引用:Wikipedia
土地は、ざっくりエリアごとに用途が決められています。算出した積算価格に「用途地域」による調整を入れましょう。
引用:ゆるむメモ
用途地域を調べるには、用途地域マップが便利です。
先ほどの8,700万円の土地を例に実際に計算してみましょう。
用途地域は「準工業地域」です。価格調整表で確認すると、準工業地域はマイナス30%です。工業地域は、住環境を悪化させる恐れがあるため評価が低くなるんですね。
87,000,000円 ×(1-0.3)= 60,900,000円
調整後の土地の積算価格は、60,900,000円になりました。
土地の形状を調べる
土地は一つとして同じ形をしていません。同じ平米数であっても、形状によって評価額が異なります。
角地の場合
角地の場合、面する道路の中で一番高い方の路線価で計算し、更に1割増しの評価をします。
二面の道路に面する土地の場合

旗竿地(はたざおち)の場合

建物編
建物の積算価格を算出するには、原価法を使います。
原価法の考え方は、
① 不動産を仮にもう一度建築した場合の原価を割り出す
② 経年劣化により少しづつ建物の価値が減っていくため、減った分の価値を原価修正する。
上記①②の考え方により、現時点の価値を推定します。具体的な計算式は次の通りです。
計算をするために、まず必要な基本情報は、
・延べ床面積
・構造
・築年数
の三つになります。
延床面積を調べる
延べ床面積は、建物の各階の床面積の合計です。延べ床面積は、建物の登記簿謄本に記載されています。
構造を調べる
建物の構造も、建物の不動産登記簿謄本に記載されています。
画像の登記簿謄本からは「鉄筋コンクリート造」であることがわかります。
構造から、建物を建てた時の平米単価である再調達価格が分かります。
画像引用:e-Stat 政府統計の総合窓口 ※黄色部分は追加加工し算出しています。
鉄筋コンクリート造の平米単価は、234,000円を目安にします。
また、建物の構造ごとに耐用年数が定められています。耐用年数はざっくりいうと、建物が資産として価値を保っていられる期間のことです。
画像引用:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」
事務所用の鉄筋コンクリート造の耐用年数は50年です。
築年数を調べる
築年数も登記簿謄本からわかります。
上記の建物は、昭和51年(1976年)に立てられたことがわかります。令和3年(2021年)現在は、残耐用年数が5年ということになります。計算式 50年-(2021-1976)=5年
ここまでで、
・再調達価格 240,000円
・延べ床面積 889.13㎡
・耐用年数 50年
・残耐用年数 5年
という情報がそろいました。この情報を、以下の計算式にあてはめて、建物の積算価格を算出します。
まとめ
以上、財務担当者が押さえておくと実務で重宝する「積算価格」の算出方法をお伝えしました。
最後にもう一度、必要な基本データをまとめておきます。
財務担当者にとっては、不動産のリサーチは難しそうなイメージですよね。ですが、基本データを収集し、基準となるテーブル表から二次データをもとめ、計算式に当てはめれば、ざっくりとした積算価格をかんたんに算出することができます。
ぜひ、積算価格を求めて、資金調達の事前準備に役立ててみてください。